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鉄筋コンクリート構造物は、呼んで名の通り鉄筋とコンクリートからできています。両者はとても相性が良く、互いの短所を補いながら強固な構造物を形成しているのです。
例えば、コンクリートは一般的に潰そうとする力(圧縮力)は強いが、引き離そうとする力(引張力)には脆いものです。
しかし、鉄筋と一体化することで、引張力を鉄筋が受け持ち、ひび割れ幅の抑制や地震力に耐えることができるようになるのです。
一方、鉄筋は空気中に曝されていると、酸素と水によって徐々に腐食していきますが、コンクリート中では、コンクリートの持つ高アルカリ性により、不働態皮膜を形成し腐食から身を守っているのです。
【図-1】鉄筋の不働態被膜
【図-2】鉄筋の腐食状況
鉄筋コンクリート構造物は、コンクリートと鉄筋の複合材料として、強度と耐久性を併せ持った「永久的なもの」として普及してきました。
しかし、多くの劣化事故や研究を得て、現在では、人間と同じように老朽化したり、病気になることが判明しています。
そこで、鉄筋コンクリート構造物のかかる病気についてある程度専門的に記述していこうと思います。
鉄筋コンクリート構造物は、前述したようにコンクリートの持つ高アルカリ性により、鉄筋の腐食を防止しています。
しかし、一度不動体被膜が破壊されれば、図−3、4に示すような電気化学的反応により鉄筋は腐食し、かぶりコンクリートの剥落や断面欠損を生じ、構造物の安全性・耐久性が低下するのです。
【図-3】不動体破壊後の鉄筋における局部電池形成と発生状況
【図-4】金属の湿食による局部電池の構成
鉄筋の腐食をはじめ、鉄筋コンクリート構造物は病気にかかると、ひび割れ、コンクリートの浮き・剥離・剥落、鉄筋腐食、強度低下などの劣化現象を生じます。
これらは,図-5に示すようにコンクリートの病気、鉄筋の病気と様々な発生経路をたどり、構造物の寿命を縮めていくのです。
なかでも代表的な病気として中性化、塩害やアルカリ骨材反応があげられます。
【図-5】鉄筋コンクリート構造物の劣化及びその過程の分類
中性化について
コンクリートが高いアルカリ性を有しているのは、セメントと水が反応し、コンクリートが固まる際に水酸化カルシウムという高アルカリ性の物質を副産物として生成するためです。
中性化とは、コンクリート中の水酸化カルシウム(アルカリ性)が大気中の二酸化炭素(酸性)と反応し、炭酸カルシウム(中性)に変化することによって、アルカリ性が失われる(pH14程度がpH8.5程度まで低下する)現象をいいます。
コンクリートが徐々に中性化して鉄筋位置まで達すると、鉄筋を保護していた不動態被膜が破壊され、鉄筋が腐食しやすい環境になります。一般に、pHと鉄の腐食速度との関係は、図6に示すとおりで、pHが低いほど腐食速度は大きくなるのです。
【図-6】pHと腐食速度の関係
中性化による鉄筋腐食とコンクリート剥落のメカニズムは図6のようになります。
中性化による鉄筋腐食とコンクリート剥落のメカニズムは図7のようになります。
【図-7】中性化による鉄筋腐食、コンクリート剥落のメカニズム
中性化の進行は、仕上げ材やコンクリートの品質、環境条件により異なります。当然、ひび割れの多いコンクリートは、ひび割れから二酸化炭素が容易に進入し、中性化が促進されるのです。
また、酸素や水も容易に進入するため、早期に鉄筋腐食が起こります。
無論、高度成長期にみられるような、セメント量の少ないコンクリートや、不法加水によって水セメント比が高い粗悪なコンクリート、また施工管理不足によるかぶり厚の少ないコンクリートなどは、早期に鉄筋の位置まで中性化が進行してしまうことになります。
中性化が進行し、鉄筋が発錆すると、その体積が2.5倍に膨張し、膨張圧によりかぶりコンクリートを剥落させ、第三者への被害を引き起こす危険性があります。また、断面欠損を生じた鉄筋は、強度や伸び率が低下し耐震性を失ってしまうことにもなるのです。
塩害について
鉄筋は、コンクリートの高アルカリ性によって守られており、中性化の進行しない限りは鉄筋が腐食しにくい環境にあります。
しかし、コンクリート中に多量の塩化物を含んでいると、塩化物イオンの作用により鉄筋の不動態被膜が破壊され、中性化を待たずして鉄筋が腐食します。
一般的に、塩害による鉄筋腐食は十数年と短い期間で進行する場合が多く、直ぐに建て替えなければならなくなる場合もあるのです。
では、多量の塩化物はどこからくるのでしょう。
一つは、コンクリートの材料に含まれているもの(内在塩化物イオン)、もう一つは、外部からコンクリート中に侵入してくるもの(外来塩化物イオン)に分かれます。
前者は、主に海砂や塩化カルシウムが含まれた混和剤(促進型)の使用によるもので、海砂は、昭和40年頃河川砂の枯渇に伴い使用量が増加してきました。
特に近畿・中国・四国・九州・沖縄では、河川砂の資源が少なく、沿岸地域で約80%以上を海砂に頼っていたと言われています。当然、海砂は洗浄・脱塩して使用すれば塩害を引き起こす可能性は低くなりますが、当時、骨材の生産が高度成長期に伴う建設ラッシュの需要においつかず、十分な除塩対策がされないまま使用されていたのです。
後者は、海水の飛沫が飛来してくる場合(沿岸部)や融雪剤に塩化物イオンを使用している場合(山間部など)などが挙げられます。
このような背景を踏まえ、昭和54年にJASS 5で、砂に含まれる塩化物の総量規定、昭和61年には建設省がコンクリートに含まれる塩化物の総量規定が定められました。
しかし、海砂の使用が本格化した昭和40年〜61年の間に建設された鉄筋コンクリート構造物では、海砂による塩害被害の懸念が残されているのです。
【図-8】骨材需要の推移
また、日本建築学会「鉄筋コンクリート造建築物の耐久性調査・診断および補修指針(案)・同解説」では、海岸部より250m以内を塩害地域としています。さらに、1km以内を準塩害地域としています。
【図-8】海岸からの距離とコンクリート表層部の塩分量との関係
[参考文献]
1)
日本建築学会:「鉄筋コンクリート造建築物の耐久性調査・診断および補修指針(案)・同解説」 1997.1 p.68
2)
大濱嘉彦:鉄筋コンクリート構造物の劣化対策技術 1996.1 テクノシステム p.6 P.9
3)
Whitman,W.,et al.:Effect of hydrogen-ion concentration on the submerged corrosion of steel, Ind.Eng.chem. Vol.16 No.7 1924.7 pp.665〜670
4)
岸谷孝一,西澤紀昭他:「コンクリート構造物の耐久性シリーズ 塩害(U)」 1986.5 技報堂出版 p.4
5)
岸谷孝一,西澤紀昭他:「コンクリート構造物の耐久性シリーズ 塩害(T)」 1986.5 技報堂出版 p.110
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