タイル仕上げは、わが国では、その美装性、耐久性、清掃のし易さ、躯体の保護機能などの観点から、外装仕上げに多用されていますが、欧米では、タイルはいずれ落ちるものと考えられ、外壁への適用は禁止されています。
海外ではタイルは、もっぱら、バスルームやトイレなどの内装用と床用に使われているのです。
現実に、日本建築防災協会の統計資料(外壁タイル張りの耐震診断と安全性対策指針・同解説の付-5外壁タイル張りの剥離・剥落故障例 1998年発行)によれば、タイル張り外壁の故障が確認されるまでの経過年数は平均13.6年と報告されています。(下図-1参照)。 |
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【図-1】外壁タイルの故障確認までの経過年数の分布(熊谷)※ |
タイル仕上げ外壁の故障は、主に、剥離・剥落であり、その原因は、日射と放冷による表面温度変化で起こる膨張・収縮の繰り返し応力とその重さ(モルタルを含めた)と考えられています。
日射(太陽熱)の影響は、下図-2に示すように、北面の外壁に比べ、南面、東面、西面の浮き上がり率の度数が大きく、日射時間の多い面の順番になっていることからも容易に推察できるでしょう。
そこで、剥離・剥落を防止するには、熱吸収の少ない白っぽいタイルの使用や、接着力を高めるためのタイルの裏形と接着モルタルの選定などが重要です。 |
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【図-2】外壁タイルの方位別の浮き上がり率の分布(熊谷)※ |
しかし、それらの対策は、故障発生までの時間を遅延させることは出来ても、恒久的な対策ではありません。
したがって、タイルはいずれ落ちるものと考え、通常、築10〜15年で一般的に実施されているタイルの部分張替えや浮き注入による補修は、第1回目の改修工事とし、それ以降の改修では、基本的に、全面張替えを繰り返していくか、ピンやネットを組み合わせた剥落防止工法等を適用することが望まれます。
また、剥落防止工法と組み合わせる新規仕上げ層についても、極力、薄く軽いものを適用することが重要といえます。 |
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